前回のブログ(前編)では、「私、お金はあります」と防衛策のように仰った20代の彼女が抱える、深い焦りと孤独についてお話ししました。
カウンセリングを重ね、私たちは二人三脚で婚活をスタートすることを決意。まずはその第一歩として、お相手に自分を知ってもらうための「プロフィール作成」に取りかかりました。

ここで私たちは、ある大きな決断をします。 それは、「ADHDの特性があること」をプロフィールに明記するということです。
もちろん、これには勇気が必要でした。「お申し込みが減ってしまうのではないか」という不安がなかったと言えば嘘になります。しかし、彼女の良さは何と言ってもその「素直さ」と「真っ直ぐさ」です。最初からありのままの自分を受け入れてくれる人と出会うため、嘘のない選択をしました。
それと同時に、彼女がこれまで就労支援施設で一生懸命にスキルを磨いてきたこと、そして現在は障害者雇用枠として社会に出て、自立してしっかりと仕事に向き合っていることも、丁寧に文章に載せました。彼女が重ねてきた努力は、立派な強みだからです。
婚活スタート!システムは理解できても「最初の一歩」が動けない理由
準備は万端、いよいよシステムを開通して活動がスタートしました。 しかし……彼女の足は、そこからピタリと止まってしまったのです。
システムの使い方やお見合いまでの流れは、説明の時にしっかりと理解してくれていました。 では、なぜ動けなくなってしまったのか。
それは、彼女にとって「婚活」という世界が人生で初めての未知の領域だったからです。「もしまた、過去のように拒絶されたらどうしよう」「特性のせいで上手くいかなかったらどうしよう」という、過去のトラウマと慎重さが混ざり合い、どうしても最初の一歩を踏み出す勇気が出ないようでした。
「焦らなくて大丈夫ですよ。まずは焦点を『婚活』ではなく、『今の自分』に当ててみましょう」
私はそう語りかけ、無理に活動を進めるのではなく、「自分を見つめ直す時間」からスタートすることにしました。
特性の「苦手」ではなく「魅力」に目を向ける
多くの相談所では、「特性があるなら、ここを直しましょう」というマイナスの修正から入るかもしれません。しかし、私はメンタル心理カウンセラーとして、彼女の「苦手」ではなく、彼女の中に眠るたくさんの「魅力」に目を向けました。
- 言われたことを真っ直ぐに吸収する「素直さ」
- 不器用でも前を向こうとする「一生懸命さ」
これらは、婚活市場においても非常に強力な武器になります。対話を通じて彼女自身にその魅力を自覚してもらいながら、「これからどんな自分になりたいか」という未来の視点に立って、彼女のためだけの「オーダーメイドの魅力アッププログラム」を作成しました。
最初のステップは、当たり前の日常から。「笑顔の挨拶」の魔法
このプログラムのルールはとてもシンプルです。 「ひとつクリアできたら、次のステップに進む」という、ゲームのようなスモールステップ方式を採用しました。
そして、記念すべき最初のステップに選んだのは、婚活のテクニックでも自分磨きでもない、ごく当たり前の日常の行動でした。
「職場に着いたら、笑顔で『おはようございます』と周りに挨拶をしましょう」
実は彼女、本人はしっかり挨拶をしているつもりだったのですが、緊張や特性による強張りのせいで、どうしても表情が硬くなってしまいがちだったのです。「笑顔がない、表情がない」状態の挨拶は、相手に「話しかけにくいな」という印象を与えてしまい、コミュニケーションの壁を作ってしまいます。
「当たり前のことを、相手に伝わるようにやる」
これは一見、婚活とは関係のない遠回りに見えるかもしれません。時間もかかるアプローチです。けれど私は、この日々の小さな「伝わるコミュニケーション」の積み重ねこそが、巡り巡って彼女の婚活を必ず上手く進める手段になると信じていました。
彼女は本当に素直でした。私のアドバイスを心から信じて受け止め、毎日職場で「笑顔の挨拶」を意識し、一歩ずつプログラムをクリアしていってくれたのです。
小さな「できた!」の積み重ねが起こした奇跡
数週間が経ち、小さな「できた!」を積み重ねた彼女の表情には、入会当初にはなかった瑞々しい自信が戻りつつありました。
そんなある日のことです。 なんと、システムを通じて初めての「オンラインお見合い」が成立したのです!
プロフィールにADHDであることを明記した上で、彼女の自立した姿勢や真っ直ぐな人柄に興味を持ってくれた男性が現れた瞬間でした。
日常の挨拶という小さな階段を一歩ずつ上ってきた彼女は、いよいよ人生初めてのお見合いのステージに立ちます。画面の向こうの男性と、一体どんな時間を過ごすことになるのでしょうか。
次回のブログでは、【中編~初めてのお見合い、そして彼女の変化】へ続きます。

